一期一会
10 夏休み
待ちに待った夏休みが来た。

あれから中原君とは話すことなく夏休みを迎えた。
私が話し掛けるなって言ったから当たり前か。

せめてもの救いは、彼女と二人で仲良くしているところを見なかったこと。

きっと見ていたら夏休み中、頭から離れなかっただろうから。


夏休みの初めに成実ちゃんと紘子ちゃんの地元である夏祭りに誘われただけで、あとの予定は全く無い。
部活もやっていない私はやることもないので、とことんバイトを入れまくった。

がむしゃらに働いていれば余計な事を考えずに済むから。




「二人とも似合ってる」

今日は成実ちゃんと紘子ちゃんの地元のお祭りに訪れている。
二人はカラフルな可愛い浴衣を着てきた。

「照れちゃうな!」
「ふふっ。ありがとう」

私の言葉に笑顔で照れる二人。
私も着てこれば良かったな。


「花火キレイだね!」

成実ちゃんが夜空を見上げながらその美しさに興奮していた。

「たまや~!」

いつも大人しい紘子ちゃんも夜空を彩る花火の美しさに珍しくテンションが上がっていた。


でも私はその花火を観ながら別のことを考えていた。


八月の終わりの彼の地元の花火大会。

彼と約束したが一緒に行くことは無い。


あの美人な彼女と行くんだろうな……。




花火を見ていると、どんどん惨めな気持ちになった。
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