一期一会
「腹減ったから飯食いたい」


笑顔の彼はこの辺りの土地勘は無いはずのに、「朝のモーニングが人気な喫茶店があるから行こう」と言った。


もしかして私の為にスマホで事前に調べていたのだろうか。
今日様子が変だったら、無理矢理学校へ連れていかないと考えてくれていたのだろうか。
あの最後の交差点に近付いた時、彼に心配を掛けるほど私の顔は酷い顔をしていたのだろうか。

そう考えたら先程までの不安が嘘のように一気に吹っ飛び、目頭と胸の奥が熱くなった。




中原君と喫茶店に入るとモーニングの時間帯なのでかなり店内は混雑していた。

そして急にこの現状に焦りだす私。

学校をサボったのは初めてで、しかも制服姿。

大丈夫だろうか……。

小心者の私は学生は学校に行きなさいって追い出されるんじゃないかって不安でビクビクしていたが、普通に席に通してもらえて胸を撫で下ろした。

席につきモーニングを二つと彼はコーヒー、私は紅茶を注文した。
すぐに注文した品がテーブルに運ばれる。

私は小柄だが、毎朝食パン二枚はペロリと食べきってしまう。
亜由達と食事に行くとその小さい身体の何処に入っていくんだと言われる程食べる方。

そんな大食らいな私が今日は朝ご飯が喉を通らず、全く食べていなかった。


先程彼の優しさに安心したせいか、運ばれてきたバスケットの中のホカホカの食パンを見たらお腹が鳴って、食べ始めたらあっという間にパンは無くなってしまった。
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