略奪"純"愛 『泣かすなら俺がもらう』
俺はエレベーターを待っている結の隣に並ぶと、もう一度、手を取った。

結は何も話さない。俺は

「結、怒った?」

と聞いた。

結はその問いかけすら、無視をする。

俺は、そんなにダメな事をしたのか?
結に無視をされるのは、心底こたえる。

「結、ごめん。もうしないから。」

言い合いの喧嘩なら、どれだけしても、楽しいのに。


俺が項垂れていると、チン!とエレベーターが到着した。

結は、繋いだ俺の手を引いてエレベーターに乗り込んだ。

午後10時のエレベーターの中は無人だった。

結は1階のボタンを押して、繋いだ手をぎゅっと握った。

そして、俺の腕に寄りかかって言った。

「会いたかった。」

俺は、繋いだ手を離して、ぎゅっと結を抱きしめた。

「俺も会いたかった。」

結… 結… 結…
言葉にならない思いが溢れる。

今、俺の腕の中に結がいる。
それが、どんなに幸せな事か、誰にも分からないだろう。
結ですら…

きっと、結が思ってるよりずっと、俺は結が好きで、大切なんだ。

この1年、結を手に入れる事をどれほど願ってきた事か。


エレベーターが1階に着くと、俺たちは、手を繋いで駅まで歩いた。
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