Adagio
「うちの会社ってさ、何の会社だっけ」
 宇美は突然訊いてきた。

「教育総合企業です」
「うん。学びは何のためにある?」

「人、ですか?」
 有紗は首を捻った。

「そうねえ、人だねえ。人の未来のためにある」

 宇美は適当な裏紙に、今有紗との会話で出てきた言葉を図として書き記していく。定規を当てたようにまっすぐな線で、建物を、そしてその中に人らしき円を描く。

「綿貫はなんとなく答えを分かっているんだよね。ただそれを上手く頭の中でまとめられないというか、関連付けして考えるのが苦手だね」

「……自分でも、応用が利かないと思います」

「落ち込まなくていいよ。学校の勉強と一緒で、これもトレーニングでカバーできるものだから。会社ってさ、こうやって人の集合体で出来てるのね。

大きくなって、企業理念だとかを謳ってると、会社っていうのが何かひとつの生き物みたいに感じるかもしれないけど、その中にはたくさんの人がいる。私もいるし、綿貫もいる。人の上からコンクリートの箱をかぶせたのが会社」
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