Adagio
「そういや綿貫さ、今日少し早めにランチ出たでしょ。ちょうどそのあとくらいだったかな。坂巻くんが綿貫に会いに来たよ」

「え、わたしですか?」

「うん。お菓子なら私が預かってやるって言ったんだけど、『また来ます』ってどこか行っちゃった。ランチの誘いだったかもな」
 宇美が肘で有紗の腕を軽く突く。

「それはないです。あ、でもやっぱり、気にしてるのかな坂巻さん」
 断言したが思い直し、有紗は宇美を見上げる。

「何かあったの?」

「実は、少し前に坂巻さんのこと誘ってみたんです。週末一緒にカフェに行きませんかって。でも、駄目でした。坂巻さんは優しいから、用事があるって言ってたけど迷惑だったんだと思いました。今朝の会議、どうしても目を合わせることも出来なくて」

「ふうん、そうだったんだ」

「もう、あきらめなきゃ駄目ですね。仕事に影響しちゃう」
 有紗は明るい声を出した。
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