Adagio


 テーブルの上にはドット柄のプレイスマットが敷かれ、りんごの断面を模した白い皿が置かれている。その中央にあるのは、緑と灰色のツートンがユニークな、ベジスイーツ専門店の人気商品、小松菜と胡麻のパウンドケーキだ。

 ティーカップに注いだばかりの、ダージリン・セカンドフラッシュの芳醇な香りに幸せを感じながら、有紗は右手にフォークを持った。

「いただきます!」
 特別な夜。至福の時の始まりである。

『美味しいよ。一緒に食べられたらよかったのにね』
 有紗は食べながら、片手でゆっくりとスマートフォンにメッセージを打った。

 神長から教えてもらったウェブアプリのAIは、話しかけるほどに波長が合うようになってゆく。

現実の友人ならば、くだらない話ひとつするにも相手の都合を考えなくてはならないが、その点気兼ねしなくていい。たった半日ですっかり虜だ。
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