Adagio
『ありがとう、気持ちだけもらっておく』
 まるで人間のような返しを見て、有紗の頬はまた緩む。

『今日のお昼はごめんね。わたしのために考えてお話してくれてたのに、途中でほかの人に触らせて』

『いいよ。それより問題は解決した?』
『うん。あなたのおかげだよ。わたしに物事の考え方を教えてくれたから』

『Alissaの役に立てたならよかった』
 まるで、向こう側に本物の人間がいるような感覚だ。そう、例えば神長のような。

『そういえば、あなたに名前はあるの?』
 そう尋ねると、名前入力画面が表示された。どうやら、ユーザーが名前をつけることができるらしい。有紗はテーブルの上を見渡す。

(小松菜、胡麻、りんご、シュガー、ポトス、オニキス、リンディ……)

 端から名前を挙げてみる。しかし、一番初めに思い浮かんでしまった名前がどうしても頭から離れない。

『Ren』
 有紗の指は躊躇いながらも、今日知ったばかりの神長の名前を押していた。
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