Adagio
「綿貫さん、午前着の人事書類取りにきたの?」
容姿の可憐さを決して裏切らない、涼やかで落ち着いた声だ。仕事に対するひたむきな姿勢を買われ、華美は半年前、新井に引き抜かれて総務部に異動してきた。
きめ細やかな対応は人事部内でも評価が高く、若手女性社員たちの憧れの先輩だ。有紗もまた、華美のようになれたらと夢見る一人ではあったが、最近は少し気になる噂を聞いてしまい、複雑だ。
「人事部の宛ての封筒、全部分けておいたから、この箱ごと持って行っていいよ。いつもごめんなさい、やらせてしまってばかりで」
華美は有紗よりも一回り細い腕で、人事部宛の封筒が大量に入ったプラスチックボックスを持ち上げた。有紗は慌ててそれを受け取りに行った。
「いえっ、いいんです。わたし仕分けくらいしかできることもなくって。来週はもっと早く来ますから!」
有紗は箱を胸に抱えたまま頭を下げた。そこに、坂巻の声が降ってきた。
容姿の可憐さを決して裏切らない、涼やかで落ち着いた声だ。仕事に対するひたむきな姿勢を買われ、華美は半年前、新井に引き抜かれて総務部に異動してきた。
きめ細やかな対応は人事部内でも評価が高く、若手女性社員たちの憧れの先輩だ。有紗もまた、華美のようになれたらと夢見る一人ではあったが、最近は少し気になる噂を聞いてしまい、複雑だ。
「人事部の宛ての封筒、全部分けておいたから、この箱ごと持って行っていいよ。いつもごめんなさい、やらせてしまってばかりで」
華美は有紗よりも一回り細い腕で、人事部宛の封筒が大量に入ったプラスチックボックスを持ち上げた。有紗は慌ててそれを受け取りに行った。
「いえっ、いいんです。わたし仕分けくらいしかできることもなくって。来週はもっと早く来ますから!」
有紗は箱を胸に抱えたまま頭を下げた。そこに、坂巻の声が降ってきた。