Adagio
「わかりました」
華美はさっそく仕事に取り掛かるのか、有紗に軽く頭を下げてからすぐに自席に戻った。
坂巻はほぼ無意識的に華美に視線を送り、箱を抱えたまま呆然と立ち尽くしていた有紗に、「それじゃ」と背中を向けた。
「さ、さかまきさんっ」
有紗は慌てて呼び止めた。
「ん?」
「おうちに入ったサブレ、可愛くてすごく嬉しかったです。ありがとうございました」
「ああ」
坂巻は照れたように笑いながら振り返った。
「こちらこそ、いつもありがとう」
いつもなら嬉しいはずの笑顔に、胸がぎゅっと苦しくなる。有紗は心の中で溜め息を落としながら、エレベーターに向かった。
たったあれだけの会話からでも、互いを信頼しあっていることが良くわかる。
最近はよく、勤務時間前にオフィスで話をしているようで、坂巻と華美の関係は女性社員の間で噂になっているが、やはりそういうことなのかもしれない。
華美はさっそく仕事に取り掛かるのか、有紗に軽く頭を下げてからすぐに自席に戻った。
坂巻はほぼ無意識的に華美に視線を送り、箱を抱えたまま呆然と立ち尽くしていた有紗に、「それじゃ」と背中を向けた。
「さ、さかまきさんっ」
有紗は慌てて呼び止めた。
「ん?」
「おうちに入ったサブレ、可愛くてすごく嬉しかったです。ありがとうございました」
「ああ」
坂巻は照れたように笑いながら振り返った。
「こちらこそ、いつもありがとう」
いつもなら嬉しいはずの笑顔に、胸がぎゅっと苦しくなる。有紗は心の中で溜め息を落としながら、エレベーターに向かった。
たったあれだけの会話からでも、互いを信頼しあっていることが良くわかる。
最近はよく、勤務時間前にオフィスで話をしているようで、坂巻と華美の関係は女性社員の間で噂になっているが、やはりそういうことなのかもしれない。