Adagio
「成長の幅の問題ですか?」

「いいや。将来が本当に楽しみなタイプだね。私が彼を育てられるかどうかは別として、五年後を見たいなって思う」

 だったら一体何が駄目なのか。難しい顔をして黙り込む有紗の様子をじっと窺っていた宇美は「これ、宿題ね」と、話を切って立ち上がった。

「じゃあ登録よろしくね。終わったら新井くんに内線入れて内容を確認してもらって。新井くんは午後から会議だから、午前中のうちにね」

「はあい」
「あ、そうだ。悪い、サブレもう一枚もらっちゃった。今度おごってあげるから勘弁してね」

 憎むことの出来ないほど屈託のない笑顔で言われ、有紗はもう一度「はあい」と力のない声で返事をした。
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