Adagio
「えっ、わたし?」
宇美の言葉を遮って、有紗が声を上げる。
「なに」
「な、なんでもないです」
そのまま身体を縮めて、有紗は黙り込む。唐突に噴き出した汗の粒が額からころがり落ちる。
人事部では確かに有紗が先輩だ。しかし仕事のキャリアは産休、育休期間を抜きにしてもあちらの方が断然長い。
(なんでわたしなんだろう。わたしよりももっと仕事が出来る人が教えたほうが、教わる人にとっても良いに決まってるのに)
「首藤さんは次の人事でまた動くかもしれないけど、運営部に戻るにしても、ここで得られる知識は絶対無駄じゃないからさ。綿貫、しっかり教えてあげてね」
(あ、そっか。腰掛けってことか……。先輩たちが労力を使って教えるのも無駄だから、わたしに回ってきたんだ)
自分なりの答えが見つかると、ほっとする反面、少しがっかりしたような気持ちもあった。
宇美の言葉を遮って、有紗が声を上げる。
「なに」
「な、なんでもないです」
そのまま身体を縮めて、有紗は黙り込む。唐突に噴き出した汗の粒が額からころがり落ちる。
人事部では確かに有紗が先輩だ。しかし仕事のキャリアは産休、育休期間を抜きにしてもあちらの方が断然長い。
(なんでわたしなんだろう。わたしよりももっと仕事が出来る人が教えたほうが、教わる人にとっても良いに決まってるのに)
「首藤さんは次の人事でまた動くかもしれないけど、運営部に戻るにしても、ここで得られる知識は絶対無駄じゃないからさ。綿貫、しっかり教えてあげてね」
(あ、そっか。腰掛けってことか……。先輩たちが労力を使って教えるのも無駄だから、わたしに回ってきたんだ)
自分なりの答えが見つかると、ほっとする反面、少しがっかりしたような気持ちもあった。