Adagio
「この間はありがとう、もらったサブレすごく美味しかった。今度わたしも何か買ってくるね」
「そんなとんでもない、だってあれが食事のお返しだったのに、更にお返しもらったら大変です!」

「人のためになにかを選ぶのって楽しいし、わたしがただそうしたいだけだから」
「えー、そんなあ……、悪いです」

 華美の気遣いにただただ恐縮していると、片手にコピー用紙の束を抱えた坂巻が戻ってきた。

「綿貫さんおまたせ」
「すみません。届いたら、絶対にすぐ返しますから!」

「これから暫く外に出るから、僕がもしいなかったら、デスクの上にでも置いといてくれればいいから」
「はい、ありがとうございます」
 坂巻から束を受け取って、有紗は深々と頭を下げた。

「あ。佐倉さん、新井さんが戻ったら外出伝えておいてもらっていいかな。もし何かあったら僕の携帯にって」

 坂巻が向き直ると、華美は「わかりました」と、はにかんだ笑みを浮かべる。意識してそうしているわけではないのだろうが、華美が坂巻を見送る視線はやはり特別だ。
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