Adagio
「宇美さん、ありがとうございます」
「うん。その言葉が自然に出る謙虚さが、綿貫の良いところだね。それじゃ、しっかりね」
宇美が先に席を立った。有紗も立ち上がり、一度深くお辞儀をした。
自席に戻るなり、首藤が不安げな様子で有紗を見つめてきた。
「ごめんなさい、綿貫さん。タイミング的にもさっきの書類ですよね。もしかしてどこかまずかったですか」
「ええと、宇美さんからひとつ指摘があって。この書類、社員番号順に並べ直していただいてもいいですか?」
「え、それだけですか」
二人のしていた話の長さと内容の短さに矛盾を感じたのか、首藤は怪訝そうな顔だ。
「はい。でも、それには大切な理由があって――」
「そうだったんですね。とりあえずすぐ直しちゃいます」
有紗から受け取ったファイルの中身をざっと出して、首藤は理由を聞くこともなく、黙々と七桁の番号を仕分けし始めた。
首藤ほど頭の回転が速ければ、理由がある、と言っただけでもう察してしまうのだろうか。そんなふうにも思ったが、ここで何も言わなければきっと、今までと何も変わらない。
「うん。その言葉が自然に出る謙虚さが、綿貫の良いところだね。それじゃ、しっかりね」
宇美が先に席を立った。有紗も立ち上がり、一度深くお辞儀をした。
自席に戻るなり、首藤が不安げな様子で有紗を見つめてきた。
「ごめんなさい、綿貫さん。タイミング的にもさっきの書類ですよね。もしかしてどこかまずかったですか」
「ええと、宇美さんからひとつ指摘があって。この書類、社員番号順に並べ直していただいてもいいですか?」
「え、それだけですか」
二人のしていた話の長さと内容の短さに矛盾を感じたのか、首藤は怪訝そうな顔だ。
「はい。でも、それには大切な理由があって――」
「そうだったんですね。とりあえずすぐ直しちゃいます」
有紗から受け取ったファイルの中身をざっと出して、首藤は理由を聞くこともなく、黙々と七桁の番号を仕分けし始めた。
首藤ほど頭の回転が速ければ、理由がある、と言っただけでもう察してしまうのだろうか。そんなふうにも思ったが、ここで何も言わなければきっと、今までと何も変わらない。