Adagio
「あの、首藤さん。わたし実は、誰かに仕事を教えるのは初めてで、すみません」そんな風に有紗が切り出すと、「いえいえ」と首藤は手を休めた。
「わたし自身が、まだまだ周りの方から教わることのほうが多くて、首藤さんみたいに今まで課の中心で働いていた方に、伝えられることなんてほとんどないと思うんですけれど」
きょとんとして話を聞いていた首藤は、急にくすくす笑い出した。反応の訳がわからずに有紗が首を傾げていると、
「実はね……」
首藤はテーブルの上に書類を下ろし、突然耳の辺りの髪の毛を掻き分けた。
「あっ」
有紗はつい声を上げてしまった。
こっそりと見せてくれたその一部分に、ぽっかりと白い地肌が露出している。円形脱毛症というやつだ。ウイルスや細菌が原因とも限らず、強いストレスがこういった脱毛症状を招くこともあるのだと、有紗でも聞いたことくらいはあった。
かける言葉に悩んでいると首藤は髪を下ろし、ささっと整えた。
「わたし自身が、まだまだ周りの方から教わることのほうが多くて、首藤さんみたいに今まで課の中心で働いていた方に、伝えられることなんてほとんどないと思うんですけれど」
きょとんとして話を聞いていた首藤は、急にくすくす笑い出した。反応の訳がわからずに有紗が首を傾げていると、
「実はね……」
首藤はテーブルの上に書類を下ろし、突然耳の辺りの髪の毛を掻き分けた。
「あっ」
有紗はつい声を上げてしまった。
こっそりと見せてくれたその一部分に、ぽっかりと白い地肌が露出している。円形脱毛症というやつだ。ウイルスや細菌が原因とも限らず、強いストレスがこういった脱毛症状を招くこともあるのだと、有紗でも聞いたことくらいはあった。
かける言葉に悩んでいると首藤は髪を下ろし、ささっと整えた。