Adagio
「わたしもそうです。宇美さんに注意されて、それでやっと気付いただけで。……気付いたって言っても、まだまだ同じようなことばっかり注意されていますけど。

わたし、応用が利かない上に、気も利かなくて駄目なんです。だから、首藤さんみたいに頭の回転が速い方が羨ましい」

「とんでもない! 無理矢理人事部に入ったんだから、みんなと同じくらい出来なきゃ、ここに居させてもらうのが申し訳ないと思ってて、フル回転ですよ。ボロださないようにするだけで、もういっぱいいっぱい」

 力の抜けた言葉と共に、首藤はふっと笑みをこぼした。

「……出勤簿の精査ですけど、ただこなそうとするだけじゃ、ミスも起きますよね。千人分精査してるんだから、一人や二人間違えてもいいだろうっていうわけにはいきませんもんね」

「はい。首藤さんすごいです。理解の早さにびっくりしちゃいます」
今度のそれは、お世辞もやっかみもない、本心からの言葉だった。
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