Adagio
「ほんと? だったら良かったけど」

「本当ですよー。黙々と同じことしてるから、余計なこと考えちゃうんですよね多分。給湯室の掃除でもしてこようかなあ」

「それもいいかもしれませんね。私、綿貫さんのやってるそれ、このファイリング終わったらやりますよ。……あ」
 何か思い出したのか、首藤がはたと動きを止めた。

「そうだ。ついさっき宇美さんから、冷蔵庫の修理に人が来るから中身を出しておいてって頼まれてたんだった。お願いしちゃってもいいです?」

「わかりました。じゃあついでにわたしやっておきますね」

「ごめんなさい、お願いします。……綿貫さん、気分転換にゆっくりお茶でも飲んできてくださいね」
 首藤は最後を小声で付け加えた。

 冷蔵庫の修理。人事部では、壊れた機械ものをメーカー修理に出す前に、システム課に連絡することが多い。

PCの不具合で坂巻を呼んだ際に、壊れていたあれやこれを直していったのがきっかけのようだ。明日の会議より先に、坂巻と会う機会がやってきてしまった。
< 77 / 131 >

この作品をシェア

pagetop