Adagio
「人事部らしい考え方、ですか?」

「はい。仕事しつつ、綿貫さんや宇美さんとの話を思い出しつつ、私ちょっと目線を変えて考えてみます」

 首藤の一言で、答えにぐんと近づいた気がしたが、まだはっきりとは掴めなかった。この会社で働く人を大切に。それが採用後の人事部の考えだということは分かるが、人材の採用基準は一体なんだろう。

 入社してもう一年半が経つ。採用にかかわる直接的な仕事を、まだ受け持ったことがないとはいえ、知らなくていい事ではない。

『顧客管理課に異動して半年だから、仕事の幅を広げないと』当たり前のようにそう言っていた、華美のことを思い出した。

(そっか、だから宿題だったんだ)

 言われた仕事以外を自主的に知ろうとしなくてはいけない時期なのだろう。有紗は宇美の意図をようやく理解したが、かといって何かを思いつきはしなかった。
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