極上御曹司の愛妻に永久指名されました
ポツリポツリと黒沢さんのことを語る。
「黒沢不動産の御曹司ね。あまりいい噂は聞かないな」
私の説明に長谷川はその瞳を曇らせた。
「最近、毎日のようにお店に来て私を誘うの。断ってるんだけど……諦めてくれなくて」
状況を伝えると、今度は風間が突っ込んで聞いてきた。
「お店には真野の父親がいたかと思うが……」
父親……という言葉に、知らず溜め息が出た。
「黒沢さんに言いくるめられてて、うちの両親は私がどんなに否定しても彼と私が付き合ってるって思ってるの」
もう両親には何を言っても無駄だ。
「外堀埋めてくつもりなんだろうな」
風間は顎に手を当てポツリと呟く。
「でも、大丈夫。就職したらお店にあまり出なくなるし」
明るく笑って見せるが、風間は真剣な表情で言った。
「そしたら、ああいうしつこいタイプは就職先にも来る」
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