Snow Doll ~離れていても君を~
「かいりー、たかいたかい、してー」
一花ちゃんと初対面ではないらしい海里は、おままごとの合間にせがまれた“高い高い”を嫌がらずにしてあげていて、それが一番の驚きだった。
「大きくなったな、一花」
普段は見せない優しい笑顔を一花ちゃんには見せていたし……。
意外な一面を見たと、思いがけずドキリとする。
海里って普通に笑えるんだ。
「もっと、たかいのしてー」
「そんなに高くしたら危ないだろ」
「いいのー」
レアな笑顔に見惚れていたら、後ろからそっと肩を叩かれた。
「ありがとう、優希奈さん。一人で子どもの面倒みるのは精神的にきついけど。みんなが手伝ってくれて、かなり助かったし。一人より、ずっと楽しかった」
しっかり私の目を見て春馬君は伝えてくれる。
そんな彼に、私も視線を返した。
「これからは、大変なときは言ってね。頼みづらいかもしれないけど、せめて隠さないでね。私達に手伝えることがあれば協力するから」
「うん……、わかった」
春馬君は少し照れくさそうな顔をしてうなずいた。
やっと、彼の心の奥に近づけた気がする。
いつもはあまり本音を言っていない風で、瞳の奥が不透明に見えていた。
まるで私の作った雪の人形のような、作り物の目をしていたから。