Snow Doll ~離れていても君を~

チェスは終わりだと立ち上がった如月先輩は、私の方へ近づき、髪を撫でた。


「優希奈。たまには恋人らしいことでもするか」

「え?」


海里といえば、感情を体内から全て消したかのような顔つきで。如月先輩の部下という風情で淡々とチェスの後片づけをしていた。

ケイや春馬君のときとは違い、先輩が私に触れても止めてこない。


「どこか、行きたい所はあるか?」

「あ。それなら、本を買いに行きたいです」

「じゃあ一緒に行こう。海里、今日は二人で出かけてくる」

「はい。……気をつけて行ってきてください」


今日は海里は付き添わないらしい。
寂しく思いながらも、如月先輩のあとについていった。





外を歩くとき、如月先輩は手を繋いできた。

でも今日の彼は、放課後だというのに珍しく眼鏡をかけていたので、以前のように落ち着いて話をすることができた。


「そういえば、今は海里のマンションに時々慶蔵も来ているんだったな」

「はい。私、実は好きな人ができて。海里と二人きりにはもう、なれないんです」

「知っている」

さらりと先輩は言った。

「え……?」
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