Snow Doll ~離れていても君を~
「海里のことが気になっていることくらい、最初から気づいてる。だが、優希奈が俺のものという立場は変わらない」
「そう、ですよね……」
うつむく私の髪を、先輩は無言でそっと撫でた。
書店のはずなのにホテルのロビーのような高級感のある入口を通り、自動ドアが開くと、どこまでも広がる本棚の列に目が輝く。
先輩も本が好きなのか、繋いでいた手をほどき、お目当ての本を探している。
「俺はこの辺りにいるから、優希奈は好きにしていいぞ」
そう言われ、まずは料理本のコーナーへ向かった。
ふと、書店の奥に見知った黒い影を見た気がしたけれど、すぐにその姿は消えてしまう。
何冊か本を買ったあと、気づけば如月先輩がいない。
近くの本棚を一周しても姿が見えず、はぐれてしまったよう……。
出入口の所で待つことにし、腕時計を確認した、そのとき。
ぐい、と強く腕を引かれ、私は外の暗闇に引っ張り出されていた。
書店の壁に押しつけられ、逃げられない。
「桜花の姫か?」
低く深みのある声が問いかける。
見上げると、灰色の髪の男が私の腕を掴んでいた。
ライトグレーのブレザーで、兄の通っている蒼生高校の制服だ。