Snow Doll ~離れていても君を~

「貴方、佐々木冬里(とうり)の弟でしょ。よく似ているから、すぐわかったわ。どのくらい強いのか、見てみたいな」


椿の姫のしなやかな手が伸ばされ、海里の胸元に届きそうになる。


私は思わず海里の黒いコートの裾を引き、椿の姫から遠ざけた。


「海里……」


緊張のせいか、知らず知らずのうちに瞳に涙が溜まっていく。


行かないで。
私のそばから離れないで。


切ない気持ちでいっぱいになり、彼のコートの裾を強く握りしめる。


「優希奈?」


驚いた様子で振り返る海里。


「貴方……桜花の姫のモノだったのね」


椿の姫は長い睫毛を伏せ、妖艶に溜め息をつく。


「俺は、如月龍臣以外に仕える気はない」


真っ直ぐな目で、きっぱりと海里が断った。


「そう……、残念」


うっすらと微笑んだ椿の姫は、艶やかな髪をさらりと流し仲間の元へ戻っていった。


近くで見守っていてくれたはずの春馬君とケイは、気を効かせたつもりなのか姿を消している。

< 160 / 268 >

この作品をシェア

pagetop