Snow Doll ~離れていても君を~
バレンタイン当日。
いつもより早起きした私は、まず出勤直前の父にプレゼントを渡した。
それからリビングへ行き、コーヒーを淹れていた兄のそばへ行く。
「薫兄さん、ガトーショコラ作ったの。良かったら食べてね」
「ありがとう、後でいただくよ」
「それでね、今日……海里の家で、晩ご飯を食べてきてもいいかな?」
おずおずと切り出した私へ、兄が視線を上げる。
晩ご飯を食べてからということは、門限の19時を越えるということだ。却下される可能性がある。
「──いいよ」
少し考え、兄が答えを出した。
「今日は特別な日なんだろうから」
「本当……?」
ホッとして笑顔を見せると、兄は寂しげに微笑みを返す。
もしかして、私にまだ想いが残っているの……?
そう思えるほど、切ない笑みだった。
「大切な人には、幸せになって欲しいしね」
「……ありがとう、薫兄さん」
その後、兄が淹れてくれたコーヒーと一緒に、生クリーム添えのガトーショコラを食べた。
兄の幸せそうな笑顔をいつか見たい、と願いながら。