怨返し─赦されない私の罪─


来希は大きく唾を飲んで、覚悟を決めると勢いよくカーテンを開けた。すると、目の前に見えたのはいつもの景色ではない。

カーテンを開けた先は動画に出てきていた章太の顔が、ほぼゼロ距離に現れた。


「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


来希は完全に腰を抜かし、座り込んでしまった。足がガタガタと震え、とてもじゃないが立ち上がれなかった。
窓の外にいる章太はガラスをすり抜け、ゆっくりと来希に向かって歩いてくる。

来希は涙で顔をぐっしょり濡らし、完璧に目の前の現実に屈服していた。


「た、頼む...章太....お、俺が悪かった...俺が悪かったから!!」


そんな来希の言葉に眉一つ動かさない章太は、来希の首を白い手で締め上げた。凄い力がかかり、来希は目玉が飛び出そうな感覚になった。


「がっ...あ....ぁぁ...」


意識が消えてしまいそうになった時、章太は片手にどこから持ってきたのか、ハンマーを振り上げた。
苦痛でうっすらとした意識しか持てなかった来希は、必死に止めさせようとハンドシグナルで謝罪するが、章太はやはり無表情だった。


「ぁ...ぁぁ....あぁ...ああああああああぁぁぁ!!!!」


来希の叫び声と共に、章太のハンマーが振り下げられた。頭に衝撃が走り、来希の視界は一気に黒く染った。
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