怨返し─赦されない私の罪─
「はぁ?マジなんだよ...いってぇな〜。こんな感じのやつ昨日もなかったか?...ちっ....マジふざけんなよ...」
そう呟きながら、携帯をポケットから取り出し、慣れた手つきでスマホを操作する。
充電が切れかかっているのが目につきながらも、スマホのカメラをライトオンにした。
ライトオンにした瞬間、来希は自分の目を疑い固まった。
ライトオンの光の先はコンクリートの床、もしくは何かの小道具やもしかしたら虫なんかが照らされる筈だった。
だが、そこにはどう考えてもあるわけが無いものが照らされていた。
まるでインクをつけたかのような真っ白な片足だった。毛は一切なく、爪は逆に黒く澄んでいた。どこか綺麗で不気味なオーラを放つその足に、蛇に睨まれた蛙のように硬直してしまった。
この倉庫内は来希しかいるはずもなかった。もし仮に扉が閉まる前に入り込んだのだとしたら、来希が扉を叩いて応答を待った時、息の音くらい聞こえてもいいはずだし、ライトオンするまで違和感を感じない程、人間の感覚は劣ってはいない。
ライトオンするまで気付かない、そんな存在に来希は一つだけ心当たりがあった。
蘇る悪夢、蘇る恐怖、自分が死に追いやり逆に追い詰められた。
来希は震える手で少しづつ上へ光を移動させていく。