怨返し─赦されない私の罪─

「....まぁそうか。それならいいわ。」


白井 竜という人物は倒したパイプ椅子を拾い上げ、堂々と座った。
竜は京吾の幼馴染で、京吾の脅し武器である暴走族の上にいる人物の事だ。というより、頭を張っている人物、総長だ。

身内や仲間に対する気持ちや信頼は人一倍強く、小さい頃は家族を守るために警察官になるとまで言っていた。
だが、現実そうはいかず竜の両親は大喧嘩の末離婚。竜は父親について行くが、父親も父親で仕事や周りの人間関係で上手くいかず、竜によく暴力をふるっていた。

そこから、竜は自分の好き勝手に生活するようになった。そして父親のように本来大事な人を傷付けるような人間になるまいと、他の身内や仲間は寧ろ守ってやるという姿勢に変わった。
その竜の性格で次第に人がついていくようになり、皆に信頼される暴走族の総長にまでのし上がったのだ。


そんな事は患者達は当然知っている訳では無いのだが、その威圧感に全員ひれ伏すことしか出来なかった。


「ってか、お前いつ退院すんの?奇跡的に問題ないっていう話じゃねぇのか?」


「大事をとってらしい。全く、これじゃあいつ復帰出来るかわかんねぇ...帰り先には玩具が待ってくれてるってのによぉ〜。」


竜は京吾の発言にピクっと瞼を動かすと、腰を掛け直した。
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