キミに伝えたい言葉がある
席を立って、病室を出る前に俺は高峯さんに近づいた。
「あの、高峯さん」
「ん?どうしたの?」
「これ・・・もし、出来るなら」
俺は、実は持ってきていた小さな紙袋を高峯さんに渡した。
中を確認した高峯さんは、一瞬目を見開いた後に、微笑んだ。
「任せて」
俺はその言葉を聞いて、病室を出た。
きっと時間がたくさんかかるだろうから俺は、廊下にずっといるのも落ち着かなくて、一度中庭の方に行くことにした。
俺は、今日病欠だから、余り目立たないようにしなければ。いつ、どこで誰が見ているか分からないからな。
中庭に行って空いているベンチに腰掛ける。
空を見上げて、はーっと息を吐けば、出る息は白い。
もう、季節は変わった。
今から、もっと寒くなって年末を迎え、そして、新しい年がやってくるのだ。
そうやって、時間は過ぎていく。
止まってほしいと願っても、俺は魔法使いではないから時間を止めることも戻すことも出来ない。
もし、魔法が使えたら俺はどうするだろうか?
まず、時間を止めて・・・否、魔法で莉桜菜の病気を治す事をするだろうな。
夢物語にはなるけれど、魔法が使えたら、良かったのにな。
「は・・・俺って、馬鹿だな」
そんな非現実的なことに縋るくらいに思い詰めているのか?
自分が感じていない内に、メンタルはやられているのかもしれないな。