キミに伝えたい言葉がある



返事は返さずに、俺は病室に戻った。
足取りは、とても重くて、莉桜菜の病室までの道のりがとても長く感じた。


「あ、真司、あんたどこに行っていたのよ!!」


病室に戻ると、母さんが俺を見るなり声を上げる。


「出とけ、て言ったのは母さんだろ」
「それでも、すぐ呼べるところにいなさいよね・・・ほら、出来たわ」


莉桜菜は、ベットの向こう側に後ろ向きで立っていた。


「莉桜菜ちゃん、真司、戻ってきたよ」
「あ、はい」


莉桜菜は、ゆっくりと俺の方を見た。
俺は、一瞬呼吸を忘れてしまった。


煌びやかな赤い着物には大きな花が散らばっている。
帯は銀色でうっすらと柄が刺繍されている。
化粧もして、髪もアップにしている。
そして、俺が高峯さんに頼んだ飾りがアップされた髪に飾られていた。
フワフワのストールのような物を首に巻いていて、綺麗、だった。


「どうかな?」


莉桜菜は、恥ずかしそうに少し下を見ながら時折チラチラと俺を見てくる。
俺は、なんて言って良いのか分からず、視線を泳がせながら言葉を探す。


「ほら、真司」


母さんに急かされて、俺は、一言「似合っている」とだけ言った。


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