キミに伝えたい言葉がある


莉桜菜の病室に入るのに、少し勇気がいった。


ゆっくりと、ドアを開けると、ベットを起こして背もたれに寄りかかっている莉桜菜がいた。
起きていることに安堵して、しかし、その細腕に点滴が繋がっているのを見て気分が落ち込む。


「莉桜菜」
「あ、真司君。おはよー」


莉桜菜は俺の方を見ると、にっこりと笑う。
いつもの莉桜菜で、昨日の出来事は嘘だっだんじゃないかって思うくらいだ。


「・・・大丈夫なのか」
「大丈夫だよー昨日は、ごめんね?来てくれてたんでしょう?」


椅子に座って、俺は莉桜菜の腕を見てしまう。
点滴の針が刺さっていて痛そうだ。


「あーこれ?ご飯食べられないから点滴。もう終わるよ」
「飯、食べられないのか?」
「念のためだよ。本当は食べられるんだけどなー」


ご飯食べたいよーと冗談まで言って、いつも通りだ。
否、いつも通りを演じているのか。


「これ、」


俺は昨日渡せなかった母さんから預かった封筒を莉桜菜に渡した。


「なに?」
「写真」
「あ、この前の?」


莉桜菜は、封筒の中に入っていた写真を見て笑う。


「たいせつにするね」


莉桜菜が、写真を封筒にいれなおして、大事に仕舞ったことを確認してから、俺は本題に入った。


「・・・今日は、どうしたんだ?」


俺は、率直に今日の理由を聞くことにした。
莉桜菜は、眉を下げた。


「単に早く真司君に会いたかっただけだよ?学校休ませちゃってごめんね」
「嘘だろ。それだけでこんなこと言うはずない」


俺は、確信があった。
何か重要な事があった。だから、俺を呼んだんだと。


莉桜菜は、笑った。
それはそれは哀しそうに。


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