perverse
翔と再会してから3日が経った
あの日、翔は何度も私と話をしたいと言っていた。宙さんはそんな翔に警戒している
だから、あれからずっと私は家に帰してはもらえず宙さんの新居にお泊まりをしていた

なぜ宙さんが警戒しているの理由はわからないが、独占欲が強いのかなと思う今日この頃
これが幸せなんだと実感している

今日は宙さんが当直なので仕事が終わってから実家に帰る
お母さん秘蔵のお庭に水やりをしていないので、少し心配だけど一昨日夕立が降ったから大丈夫かなとも思っている
時間は午後7時前で、まだ日が沈まないので明るい
私は数日ぶりに、自分の家がある駅に降りた

駅の改札口を抜ける
この後、駅前のスーパーにでも寄ろうと思っていると背後から
「美波」
って呼ぶ声が聞こえた

少し低めの甘い声。昔大好きだったあの人の声。振り返らなくてても誰だかわかった。
振り返った方がいいのか?それとも無視した方がいいのか?
宙さんは、翔から連絡があったら無視をしろって言われている。
連絡じゃなくて待ち伏せなんて怖い
私は、取りあえず無視してスタスタ歩く
「美波」
もう一度声が耳に入り、背後から腕を掴まれる
仕方なく立ち止まるとそこにはワイシャツとスラックスを着ている、会社帰りの翔の姿があった

「何ですか?腕が痛いんですけど?」

翔ってわかっているけど『私達は他人、他人』って心に言い聞かせる

『話がしたい。時間をくれないか』

今さら何言ってるの?って思うけど、以前と変わらない、翔の捨て犬のような寂しい目で言われてしまうと心が揺れそう
ダメ、ダメ

「時間なんてない。宙さんに怒られるから」
って去ろうとしたけど、また腕を掴まれた。宙さんに確認しようにも、夜診中だし絶対電話に出ないだろう。もう観念するしかないのか
もう逃げれそうにもないし、私は覚悟を決めた
「5分だけ」
私は彼に届くか届かないぐらいの小さな声で言った
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