perverse
ドアを開けるとメガネをかけた小柄な女性
「こんばんは」
と声をかける。違和感を感じる。彼女は仕事帰りの格好でコートを着用。通勤に使われていると思われるカバンも持っている
近所の人が用事で来たとは思えない服装
「こんばんは。私は星野先生と同じ大学の町田です。先生に頼まれた資料を持ってきました」
『はぁ?』って心の中で呟く。なぜならそんなことを宙さんから聞いてなかったから
急ぎで持って来てもらうようだったら伝言があるだろうし
普通本人がいる時に確認して持ってくるのではないか?
それより何でエントランスをくぐり抜けダイレクトに玄関にいるのよ
ある意味、非常識的に感じる
とはいえ自称事関係と名乗っている以上キチンとした対応をしなければいけない
「ありがとうございます。星野に渡しておきます」
と言って資料を貰おうとしたら
「あなたは?」
私を睨みながら聞いてきた
「星野の婚約者です」
と言ってはみたものの『フン』って上から私を見下ろしているのが丸わかりの態度
「常識のない人ね」
大きな声で言うけど、その言葉で固まってしまう
なぜ、初対面人に常識がないと言われる理由がわからない
「大きな声で言われるのは困ります。宙さんは今日は帰りが遅いので用件は私がことづかります」

彼女が下唇をギュッと噛んだ
「そんな事を言われる筋合いはない。宙が帰ってくるまでココで待たせてもらうわ」
と言ってドアを開けて玄関に入ろうとする
「入られたら困ります」
あまりの強引さにこの人は新手のセールスマン?とも思ってしまったが、セールスマンなら警察沙汰になるようなことはしない
「ここは宙の家でしょ?私は彼と結婚するからココに入る権利があるの」
今、宙さんのこと呼び捨てにしたよね。そして結婚っていう言葉も
もしかして、この人は…翔の言っていた院長の娘?
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