perverse

念のため彼女に確認
「もしかしたら院長先生の娘さんですか？」
半音声のトーンを明るくし営業スマイルで愛想良く聞いてみた
私が彼女の怒りのペースに巻き込まれてはいけない
これはチャンス
彼女が私の目の前に現れてくれたんだもん
このチャンスをいかさなければ
覚悟を決める
大丈夫
心の中で呟く
頑張れ！私
「わかっているならそうした態度を取りなさいよ」
「申し訳ございません。お噂は聞いていたのですが、お顔は存じていなかったので。私の勉強不足です」
と言い頭を下げる
私の力ではこの人を帰らすことはできない
彼女は宙さんに会いに来ているはず
宙さんが対応するしかない
彼が帰ってくるまで1時間あまり。
どうする？
個人的にはサッサと帰って欲しい
でも私には高飛車な彼女を帰らす度量はない
取りあえず、下手に出る
それしか方法が思い浮かばない
「宙さんは今日は夜診で帰宅するのは9時と聞いております。今から1時間もお待たせするのは心苦しいのですが」
「そうなの」
斜め上を見てそう答える
私の事が気に食わないようだ
心の中で『帰れ、帰れ』って思っている
「じゃあ中で待たせてもらうわ。二人の新居を見てみたいし……」
今、何言いました？二人の新居って
ここは私と宙さんの新居のはず
だから私が準備とかいろいろしたのに
この人は妄想している？
それとも私を追い出して乗っ取ろうと？
どちらにしても私に決定権はない
決めるのは宙さんだ
彼女を部屋に上げリビングに案内
『宙さんが帰って来るまでどうしよう』と思ったけど、彼女は自分の新居と私に宣言したように寝室などを確認している
彼女の妄想だったらあなたの方が常識ないのにね…なんて余裕を見せる
取りあえずこの人のペースに巻き込まれない
『平常心、平常心』深呼吸しながらく心の中で呟く