perverse
普通だったら『何飲みます?』なんて愛想よく聞く私だけど、この人は私にとって招かざる客何も聞かずお客様用ではなく常用の緑茶を入れて出した
持っていってもリビングにはいなく、マンションを物色するのに忙しいようだ
私は相手もせず、夕食の準備を始める
彼女もそんな私に何も言わない
部屋を一通り見終わりリビングに戻ってきた彼女は
「寝室のベッドが気にくわないわ。買い換えないと。そしてカーテン私の趣味じゃない」
とイチャモンをつけ出した
もし貴方が言うように本物の婚約者なら口だけでなく身体を動かすはず
で突然来て文句ばかり言うこの人
宙さんはこの人と結婚するっていうのだろうか?
そうならば、のしをつけてさしあげる
って思ってしまう

8時30分、鍵を開ける音
宙さんが帰ってきた
私は玄関まで出迎えに行く
『ただいま』
いつもと違う靴を見て
『誰か来てるの?』
「大学の町田先生が二人の新居を見に来られています」
『新居?何で町田先生が見に来るんだ?』
「ここは町田先生と宙さんの新居でベッドとカーテンが気に入らないと」
また他人行儀な言葉を連ねる私
形にはめていないと発狂しそう

『はぁっ?』
呆れた声を出す宙さん
玄関から外に出て行った
宙さんの行動を見て私が『はぁっ』って言いたい
あの人がいるリビングに戻りたくなく1人玄関でたたずむ

「あれっ、宙帰って来てないの?」
玄関にやって来て言うから「さあっ?」って首を傾げてとぼける
彼女はそれ以上興味がないのかリビングに戻った

それから5分以上たっただろうか。宙さんが戻ってきた
『何かされたり言われたりしていないか?』
「常識がないって言われました。それから宙さんと結婚するって」
私は悔しかった。涙がジワジワ出てくる
平常心でいようと思ったのに
宙さんは私を抱きしめた。微かに消毒液の匂いがする胸に顔を埋める
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