perverse
20 説得
リビングに二人をお連れすると宙さんの足元で泣き崩れている町田先生の姿が
「真理!」
怒っているような低い声で呼ぶ院長
彼女はその声にビクッと反応し泣き崩れる

『お忙しい中有難うございます。町田先生が、何か勘違いされているようでこちらとしては困っています』
「今日の夜診は代診だったんだね。お疲れの中申し訳なかった」
ぺこりと頭を下げる
『美波こちらへ』
お茶の準備をしている私を呼び寄せる
私は作業を止め宙さんの所へ向かう
隣に行くと私の背中に軽く手を置き

『婚約者の佐藤美波さんです』

と私を紹介

「君が星野先生の婚約者か」

院長はそう言い私を品定めするように見つめるけど、明らかに敵意を感じる
私はキッチンに戻り作業の続き
その間に来客である3人はソファーに座り話を始める

院長は迎えだけでさっさと連れて帰るだけだと思っていたのに、こんな場合でも話をすることがあるのだろうか?
お茶を持っていった時院長に
「大切な話があるので、席をはずしてもらいたい」
と言われる私
私を疎外するということは、宙さんと彼女の話で私に聞かれてはいけない話?
院長の指示に従って良いのかわからなかったので、宙さんの目を見てアイコンタクトを送ってみる
院長の言葉に不安になっているのを気づいてくれたらしく

『仕事の話じゃないですよね?彼女はこれから私の妻として支えてくれる存在です。これからされる話が彼女に関わりがあるものなら聞かせます。何か聞かれては困る話でもされるのですか?』

宙さんは上司でもある院長に私の立場を明確にしてくれた。これから話される事はたぶん私にとって良い話ではないだろう。
それでも私を立ててくれる宙さん。私は信じて良いんだよねと思うと胸の奥がジーンと熱くなる

返事をしない院長
私にとって良い話じゃない

『返事をされないってこと良いってことですね。美波、座りなさい』

強引?とも思われる態度で、相手に隙を与えない
彼は只者ではないかもしれない

私は指示通り宙さんの隣に頭を下げながら座った
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