perverse

向かい合わせのソファーの上座に院長、彼女、田中先生の順に座り、反対側に私と宙さんが座っている
彼女が院長に
「お父様、はっきり言って下さい」
って小声でが急かしている」けど、ハッキリいって聞こえてます
院長も私がいるから言いにくそう
躊躇っているようにも見える
院長が何も言わないから沈黙が続く
『町田先生が突然来られたのですが住所を事務長が無断に教えたそうです。個人情報ですし、管理方法に問題があるのではないですか？』
話を切り出したのは宙さん
「そんな勝手な事をしたのか？」
怒っている院長に向かってコクンと頷く
彼女にとって父親は怖い存在に見える
「星野先生申し訳ない。ただ真理の君への気持ちも考えてくれないか？」
申し訳なさそうに言うけど私の前で言うってことは、彼女との結婚の可能性がゼロではないと踏んでいるんだ
宙さんが首を縦に振る？それとも権力とかを盾に取って？
大人気ないけどこの女の父親ならやるかもしれない
「真理から聞いたんだがこのお嬢さんは君の弟の彼女だったらしいじゃないか。そして弟さんは別の人と結婚した。君はこの人に弟の罪滅ぼしの為に結婚するのならそれは止めて真理と結婚して欲しい」
何言ってるの？
罪滅ぼしのために私と結婚？
当人達を前にして職場の上司とはいえ第三者がこんなこと言って良い？

宙さんに視線を送ると『大丈夫だよ』って言ってくれているように私に微笑む
院長の言葉で不安になっている私の右手を握ってくれた
彼は絶対私を裏切らない
彼の手の温かさを感じて私はそう思う
『何をおっしゃるんですか？私のこれからの人生の中で重要なことなんですよ？罪滅ぼしで決めるようなそんな簡単なことではありません』
繋がれている手にギュッと力が入る
『私と美波は8年前に高校のクラブで出会いました。その時、彼女に一目惚れをしてずっと彼女の事を思っていました』
嘘？高校1年生の時に試合をしたのはお姉ちゃんから聞いたけど、一目惚れなんて話は初耳