perverse
彼女は相変わらず無言

『貴方はわかっているはず。先輩の縁談を潰した私の立場が悪くなることを。全く私の仕事の事を考えてくれないんですね』
「私が理事長に退いて院長のポジションを約束する。そうすれば医局から離れても良いのではないか?」
『私は臨床がしたい為に医師になりました。病院の経営に携わりたくありません。町田先生との結婚は私の意思は反映されないんですか?』
「それは・・・」
尻込みする院長
たぶん院長のイスを明け渡したら簡単にOKすると思っていた?

「じゃあそれに見合った結納金を払おう」

突然、思いついたように言葉を口にする院長
やはり辿り着くのはお金ですか?
呆れてしまって物も言えない

横にいる宙さんの顔を見ると微かに笑い、田中先生にアイコンタクトを送っている

『いくらですか?』
「1千万円」
『私ってそんなに安いんですか?』

宙さんが、呆れたように言う。田中先生を見るとウンウンって頷いているから、現実にそうなのかもしれない。

「じゃあ二千万円……」

溜息をつきながら院長は金額を釣り上げる
でも2という数字は割れるからいけないんじゃないんですか?

横にいる宙さんを見ると悪戯げな笑みを漏らしている
この表情を見せる時はタチが悪いんだよな

『大好きな人との婚約を解消して婿入するには対価としては安すぎます。私をナメテいるんですか?』

言われてみたらそうかもしれない
彼の収入からすると自分でなんとかできる金額
愛のない結婚をするには安すぎる?
私でもこの金額では我儘娘とは結婚したくない

「お父様」
甘えるような声で院長の腕を引っ張り急かしている彼女。誰のために苦労しているんだよって怒鳴ってやりたい
院長が気の毒だと思った。
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