perverse
「何も言わないで勝手に出て行った」
『翔、わかってはいると思うけどお前はもう二度と俺のマンションに来るな。いいな?』
「わかった。兄ちゃんゴメン」
「それより今日、真寛さんここに来るの?」
「何も言っていなかったけど、夕食には来ると思う。いつもの事だから」

キッチンへ行くとお母さんが夕食の準備をしていたので、私もエプロンを借りて手伝う
「ごめんね。美波ちゃん迷惑かけてしまって」
「お気になさらず…… 」
「真寛さんはああ見えてヤキモチ焼きなのよ。それはそれでカワイイはずなんだけど、真寛さんの行動に伴っていないのよね」
「望愛ちゃんの本当のお父さんのこと?」
「あの子人に執着しすぎちゃうの。だから優しくしてくれる人や、構ってくれる人を手放したくないって思うんじゃないかな?行動を見ての想像だけど」

相槌は打つけど、心がこもってないのがよくわかる
彼女の気持はわからないでもないが、我儘を通してばかりいては人間関係は成り立たない
それが今の翔夫婦の関係に至っている
翔は真寛さんと離婚したくて、真寛さんはそんな翔に執着して行動を監視する
果たしてこの二人の間には愛があるのだろうか?
疑問には思うけど、それ以上は立ち入る事はできない
お母さんは夕食にカレーを作っていた
「今日は人数が多いので手抜きでごめんね」
なんて言うお母さんだけど、ルーから作っているのにでどう見たって手抜きじゃない
宙さんが育った環境は私の実家より食生活のハードルが高すぎる
「私は美波ちゃんにの味方よ。だから何でも相談してね」
優しい言葉を頂いた

真寛さんは夕食の準備ができて、さあ食べようかというタイミングで実家にやって来る
何事も無かったかのように、準備も手伝わずお客様のような振る舞い
私の方が嫁みたいにセッセと働いている
まだ嫁じゃないのに
不満はないけど私の中に複雑な感情が込み上げて来る
「真寛さん今日はどこにおでかけだったんですか?」
今、ここで言ってはいけないNGワードを軽々しく口にする私
何となく彼女の態度にムカついて攻撃したくなる
そんな私の攻撃?とも取れる態度に真寛さんは無言
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