perverse
午後3時
時間キッカリに来客は訪れた
中年の夫婦と見られる男女
加害者である真寛さんの姿はそこにはない
示談を進めるために連れて来ると思われた弁護士もいない
この二人は謝罪に来たのだろうか?
一目見てこの高価なスーツに身を纏った恰幅のある男性が真寛さんの父親であることがわかる
顔がうり二つだから
籍が入っていなくても正真正銘貴方の子と言いきれるくらいそっくり!
その男性の隣にいる水商売風の美人の気の強そうな女性が真寛さんの母親?
逆に似てなさすぎ
そのギャップに心の中でプッと吹き出す私
ラスボス登場
二人とも、そんなオーラを醸し出している
リビングのソファーに座る二人、私はお茶の準備をしようとキッチンに向かおうとしたら
「時間がないので、手短に済ましたいのでお茶は結構」
そう言うのは真寛さんの父親
最初から上から目線で話すこの人に私は好印象を持つことはできない
私は彼らの前に宙さんと座った
「重傷と聞いていたけど大した事なさそうね」
口を開いた母親の言葉に苛立ちを感じると言うか、事故から何日経っていると思っているの?
直後に来ないクセに今頃来てこんな事を言われるのは心外に思う
この人達は謝罪に来た訳ではない
直感でそう感じた
「君は宙くんの婚約者なのに、彼の義妹である真寛の被害届を出しのはどうしてなんだ?」
低くて太い声で私を睨みながら言う父親
苛立ちを隠せない様子だ
というか、自分の娘が怪我を負わした相手に会って最初にいう言葉がこれですか?
ありえない
謝らない真寛さんも問題あるけど、この親もね
そう思うと、私の中の何かがプチッと切れる音が聞こえた
私の右側に座っている宙さんは、失礼な言葉を言われている私に気遣ってか、私の左手をギュッっと握るので私は『大丈夫』という気持ちを込めて握り返す
「私に殴りつけて来て謝罪のない真寛さんを私は今も、この先も親族なんて認めません」
ハッキリ言ってやった
私が被害者の立場を正当化して真寛さんの事を庇わなくても、私に何のデメリットはない
宙さんやその家族もきっと同じ気持ちだと思っている
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