perverse
私の瞳を覗きこむように、宙さんは私をみつめている

「泣いてるの?」
「だって、思いがけない答えだったので」
「何で?」

キョトンとしている宙さん

「絶対、反対されると思っていたから」

宙さんはフッと笑い

「母は昔から美波ちゃんのこと気に入っている」

と言い私の手を握る

「美波ちゃんが娘になるって喜んでいる」
「えっ、嘘?」
「何で俺が嘘つかないといけないの?」
「そうですよね」
「なんか卑屈になっていない?」

「ーーーだって私の存在迷惑じゃないですか?弟さんとの過去のこととか」
「それは100パーセントない。美波ちゃんに非はない。悪いのはキチ子」

「キチ子?」
宙さんは慌てて口を押さえた

「今のことは、忘れて」
「キチ子って誰ですか?」
「ナイショ…」

誤魔化そうとしている

キチ子って本名じゃないよね?

あだ名?

直訳するとキチガイの子?

翔の奥さん?

でもあだ名だったら、義理の妹のことを『キチ子』なんて呼ぶのはおかしい

「教えてくださいよー」
「そのうちわかるよ。それよりマンション来月には引越しできそうなんだよね」

話をすり替えようとする




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