breath
あっ、そうか……ひったくり犯が浅野先輩の可能性があるから、再犯を恐れて私は樹さんのマンションに避難したんだ

でも、その可能性がなくなったのなら私は樹さんの元に戻る必要はない

だから樹さんからの連絡もないし、専務は交通費の変更届を出すように言っていたんだ

事のつじつまが合う。つまりこの婚約は破談になる?

そんな疑問が生まれた

そうしたら今のお母様のお誘いはおかしくなる

「そうですか……」

と相槌を打ち、その後は、日時の約束をして電話を切る

胸の中で立ち込めるモヤモヤ感

私だけが何も知らないのか?

それとも私の思い過ごしなのか?

私にある感情は不安感しかなかった

今、私ができる事は【彼を待つ事】

ただそれだけ

コーヒーショップで私に見せてくれる、あの爽やかな笑顔は偽物じゃない……私の事を思ってくれている

私の頭を撫ぜる手も、いつも優しいし……

今の私は、張り裂ける感情の中、彼を信じるしかなかった
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