breath
「母さん……シッー」

鼻の前に人差し指を立てる樹さん

私はキョトンと二人の会話を見ている

樹さんは慌てて『お茶の準備をしてくる』と言い、さっさと出て行ってしまった

何が起こったのか理解できない私に、お母様はニヤニヤしている

「樹は明日美ちゃん一筋なの。だから心配だろうけど、信じてあげて」

いつものふざけた様子ではなく、優しく真剣に言ってくれるお母様

私は救われたような気がした

私の服のコーディネートが終わり、メイクと髪もパーティ仕様にお母様がしてくれる

お母様は樹さんを部屋に呼び寄せる

黒いフォーマルなドレスに、ダイアのネックレス。メイクも濃いめで、髪もアップされているせいか、いつもの薄化粧の私とは全然違う。

部屋に入ってきた樹さんは、そんな私を見て驚いている様子

二人の中でぎこちない空気が漂っている

お母様はそれを察したようか

「私はお邪魔だから……」

と言い部屋を出て行く。私達に気を使ってくれているようだ

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