breath
「ああ、バツだ。自分で解決できなかったんだから」
「解決?」
「藤崎は納得しなくて乗り込んで来た。そして親の前で平然と足を引っ張られている」

専務は神妙な面持ちで、淡々と語る

「専務、でも樹さんは悪くないです」
「悪い」

何が言いたいのか……本当にわからない

「自分のことを解決できない奴に会社が任せられるか?」

その言葉で、私はピンときた

そうだ樹さんは創業者一族

うちの会社は創業家が実権を握っているんだ

ーーーということは、樹さんが将来、社長や要職に就く

「専務の言っている意味がわかりました。お手間を取らせて申し訳ございません」
「そういうことだ」

私が理解できなくて、一瞬怖そうに見えた専務も、今は穏やかな表情に戻っている


そうこう言っているうちに料理が運ばれて来て、話が中断された

それより目の前に置かれた雑炊を見ても、やはり食欲が湧かない

『フーッ』困ったように溜息を吐く
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