breath
「車で待ってて」

専務はニヤリと笑った

私は周囲の人に泣いているのがわからないよううつむきながら店を出る

専務の車の助手席で待っていると、数分後専務は戻ってきた

「お待たせ」

専務が遅れてきたという事は、お会計をしていたという訳で

「専務、いくらでした?」

財布を出してお金を出そうとすると、専務は私の頭をポンポンと軽く叩く

ーーーこの仕草はいつも樹さんが私にしてくれた事……そう思うと胸がチクっと突き刺さる

痛い……

この痛みが涙腺と繋がっているのか?って思えるくらい、また目から涙が溢れる

専務は「これぐらいご馳走させて」と言いなながらチラッと横に座っている私を見ると、また泣いている訳だから呆れているに違いない

「望月さん、もう少し時間を頂戴」

と言い車を発進させる

私は泣いていたので声が出せず、仕方なくコクンと頷くことしかできなかった

車の中では専務が私が気遣ってくれているのか、終始無言の専務
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