breath
隠しているお弁当をチラッと見られる

「ごめん、昼食中だったんだね。食堂で食べないの?安くて、美味しいのに」

心配そうに私を見つめる

私は二年前の無邪気な頃の様子を装い

「業務上、駄目なんです。守秘義務があるので」

「そうか」

樹さんはクスって笑い、私の頭をポンポンと叩く

「明日美、明日暇?」

「ーーー空いてますが……」

突然、どうしたんだろう?

「明日、俺の新車が来るんだ。ドライブに行かない?」

いつもの私なら確実に断るけど……昔の私なら……

「良いですよ」

満身の笑みで答える

樹さんはホッとした顔をして

「車のディーラーは実家の方なんだ。納車も付き合ってくれると嬉しんだけど」

実家?

もしかしたら……あの大きな樹さんのお屋敷に寄るなんてないですよね?

ーーーー不安がよぎる

「母さんも、久しぶりに明日美に会いたいって……」

えっ、今、何を言いました?

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