breath
仕事が終わり、駐車場で樹さんを待つ

交通の便が不便な場所である、わが社のほとんどの人が車通勤だ

私は通常、行きは社長に乗せてもらい、帰りはバス通勤をしている

だから就業時間外に、ここに私がいることはほとんどない

意外な私の姿を見て驚いている人もチラホラ

社長の愛人と噂されている私が、樹さんと一緒に帰るということは誤解を生み、噂されるだろう……

浅はかだった

溜息と共に後悔が生まれる

ダメダメ、ここで後悔して挫折をしたら、またこの後、絶対後悔する

自分に言い聞かせながら樹さんを待つ

「遅いな……」

待つ振りをしてスマホを見ているけど、よく考えてみると、私は今の樹さんの電話番号を知らない

二年前、樹さんに会えなくなって何度か電話をした事はあったけど全部留守電で、何度目からは解約されていた

そのネタで私は数週間泣き続けたっけ

思い出したくない思い出が蘇る
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