breath
私は樹さんの言葉に戸惑っている

言葉に出さなくても、その戸惑いは樹さんには伝わっているようで、樹さんは無言で私を軽く抱きしめる

でも、この抱擁

愛情から来るものではなく、幼子が親に安心感を与えるためのものに似ていると思えるのは気のせいだろうか?

「俺は明日美から、この二年で信用を失ったことは重々承知している……でも、諦めることはできない。お願いだ……もう一度俺にチャンスをくれないか?」

樹さんの私に対する思いは本物だ

私は……樹さんの言葉に答えて良いですか?

一つ気がかりなのは、樹さんの父親である高宮社長の動向

「でも……樹さんのご両親が……私の事を認めないんじゃないですか?」

本心を告げる

さすがに、この二年間の樹さんとの隔離はただ事ではなく、絶対意味あるものだと思っているから

「明日美……信じてもらえないかもしれないけど、俺が必ず明日美を守る。もう二年前の俺とは違うから」
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