breath
「明日美、ここにいたんだ……よかった……」

私の顔を見てホッと安心する樹さん

「あっ……出ますね」

泣いていたのがシャワーの中だったので、きっとバレないだろう

バレてもきっと、泣いてる理由なんてわかるはずもない

シャワーを出て『樹さんどうぞ』と譲ろうとしたのに、樹さんはバスタオルで私の身体を拭きだした

「自分でできますよ」

と言う私に対して、私の顎を持ち上げじっと私の目を見つめる

「ーーー泣いた?」

真剣な眼差しで、そう言うからバレたと思ったけど

「泣いてませんよ」

誤魔化すように、嘘をつく

樹さんは、たぶん……私の事を見過ごしていると思う

その後は何も言わず、抱きしめるだけ

私を壊れ物のように優しく扱う樹さんと接すると、心が痛くなる

私はどうしたら、この心の傷を感じなくなるのだろう?

忘れたくなる……この心の傷……

疼くと痛いし、忘れてなくなるのは、まだまだ先だと思う
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