breath
「通勤……?」

「匠さんの車じゃなくて、俺の車の方が良いんじゃない?婚約者なんだし」

今の私って樹さんの婚約者なんだ……

二年前ならともかく、二年後でも樹さんの中の私の立場が変わっていない

お母さん達だけでなく、樹さんにも違和感を感じる

私はワザとニコッて営業スマイルをして

「社長との通勤は業務上なんです。樹さんもご存知だと思うのですが、社長のスケジュールは分刻みで私との打ち合わせの時間も取れない状態。だから、今すぐの変更は無理です。だから、少し時間をくれませんか?」

本当に申し訳ないが、こればかりは譲れない

この二年間、私の居場所は職場だけだったから……

そのプライドだけは守りたい

【プライド?】

樹さん曰く、私は樹さんの婚約者

少しぐらい、我儘を言っても良い?

樹さんと再会してからの私は『いつか裏切られるかも……』という不安が苛まれていた

私は彼からそれを払拭する証拠がほしかったのかもしれない
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