breath
バス停に着き、樹さんに

【お疲れ様です。取り込み中のようなのでバスで帰ります】

とメッセージを送る

どうせ、前田さんに押し切られて彼女を乗せて帰るだろう

私の指定席と約束した助手席に彼女が座る姿が頭に浮かぶ

自分の心の中がモヤモヤして、かき乱されているのがわかる

こんなことなら、助手席の約束なんてしなければ良かった

どうせ破られる約束だってわかっていたのに……

彼を試すような約束

まさか3日で破られるとは思ってもいなかった

惨めなオンナ

同じ過ちをもう一度犯そうとしている

まだ入り口を少し入ったところだから、気づくのが早くて良かった

まだ引き返すことができる

泣きそうだけど、泣かない……

自分が樹さんと一緒に地獄に落ちようと考えた罰だ

バスが来るまであと10分、ベンチに座って待つことにする

涙を堪えながらボッーと空を見ていると、樹さんからの着信
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