breath
私は深呼吸をして通話をはじめる

「はい」

「明日美、今、バス停」

「そうですが」

「今から向かうから待ってて」

そう言い、電話を切る樹さん

前田さんは諦めてくれたのだろうか?

それとも車に乗って来る?

胸がドキドキ高鳴る……彼女と同じ車には乗りたくない

惨めになるから

そうであれば、我儘かもしれないけど一人でバスで帰った方がいい

数分後、樹さんが到着

ーーー前田さんの姿は見えない

私はホッとして助手席に乗り込む

樹さんは前田さんの事の言い訳をする訳でもなく、無言で車を速攻で出した

バス停が見えなくなった頃

「明日美、気を使わせてゴメン。別にバレても良かったのに……」

「でも……」

たぶん、樹さんは私が立ち去った理由を気づいているのか、私の右手を強く握る

「明日美、前田の言う事は気にするな。アイツは平気で嘘をつく。明日美は俺の婚約者だから堂々とすればいいんだ」
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